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Dr.タコの外来小咄(がいらいこばなし) 229号

天邪鬼な私の勝手な観察です。無邪気で元気で屈託がなくて、先の事をあまり心配したりしない子どもたちを見ていると、病院にいらっしゃる取り越し苦労と持ち越し苦労でくよくよして元気がなく不機嫌な大人たちは、人生を楽しめていないように見えます。学校に長いこと通っていろんな知識をつけて経験を踏んで、かえって余計な鎧をまとったんじゃないだろうか?「幼子のようでなければ天国には入れない」という言葉がありますが、すべての衣を脱いだらスッキリするだろうなと思うこの頃なのです。

ネバーエンディング・ストレス

孫の高校受験がストレスで、最近血圧が上がって・・・というSさん 「どうでしたか、結果は」
「はっ?」
「孫さんの受験の結果ですよ」
「はあ、おかげさまで合格でしたわ」
「それは良かった、一安心ですね」
「でも、血圧はあんまり変わらないんですけど、どうしてでしょう」
「帰りが遅くなってヘンな仲間とつきあうんじゃないか、勉強について行けるかしら、とか心配の種は尽きない、ということでしょうか」
「そうなんです」
「自分のものの受け止め方を変えなくちゃ」ということに気づくまではネ

大人の宿題

「Oさん、去年に比べて体重が5キロも増えてますよ!」
「うわあ、どうしましょう。やはり甘いものが好きだし、旦那が帰ってくるのが遅いから、一緒にまたつまんじゃうんですよね」
「でも、コレステロールも高いから気をつけないと」
「だめですね、自分に甘いからつい」
「大人の宿題ですね。子どもみたいに試験も通信簿もないけど、食事と運動・生活習慣の管理、監督は自分。それだけにかなりむずかしい宿題かもしれませんね」

クスリの総攻撃

「家に帰ったらまた熱が上がりましてね」というのは昨日カゼで受診したかた
「熱冷ましも含めておくすり出してますからねえ、あとすることといえば、安静にして水分補給して」
「まあやってますけどね」
「しんどいようであれば注射でもしますか」
「んだすな、お願いします」
「クスリをてんこ盛りで飲んだらすぐ治る」と思ってるんでしょうね

奥様はペット?

眠れず食欲もなく動悸がして家にこもっている、というおじいさん
「急にそうなったというのは、何かきっかけがありそうですね?」
「ええ、可愛いがっていた犬が死んでしまって、それからなんです」というのは奥様。
「もう十年以上も一緒にいましたからな」
「車も危ないからってやめさせたんです、人嫌いで近所つきあいもないし」
「そうですか。家にじっとしていたら安心、でもつまらないでしょうね。また犬を飼うのは?」
「もうトシだから最後まで面倒見られないし」
「お隣に可愛い奥様が居るんですから、ペットと思って散歩に連れ出したらいいじゃないですか(笑)」

我慢でなく贅沢です

「Pさん、血糖値が上がって体重も増えてますよ」
「そうねえ、やっぱり食べ過ぎだわねえ、ちょっとガマンしないとね」
「ガマンというと、なんだかひもじくて大変みたいじゃないですか(本人はそうでしょうけど)。でも、いまの日本人は飽食、栄養過多ですから。食べたくても食べられない国もあることだし。贅沢な悩みだと思いません?」
こうなると生活習慣病というより構造的な「現代日本病」ですね

「そのうち」はおそらくこない

タクシー運転手だったSさん、退職してどんどん体重が増えていきます
「家にこもってるんでしょう」
「スポーツが好きでサア、相撲が終わったから今度は野球ばっかり見てるよ」
「勤務中も運動不足に注意ってお話ししたでしょう。でも時間がないって。退職してサア時間があるから歩こう、山登りだ、ゴルフし放題だって、みなさん思うんですけど、なかなかできないでしょう?」
「んだすな」
「今」やってないことは「そのうち」になってもやるようにはならないんだなァ

転載:月刊東洋療法 229号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ
昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部。田んぼに囲まれたふるさとで診察する熱き内科医。