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Dr.タコの外来小咄(がいらいこばなし) (240号)

季節外れの大雪のせいで、雪がまだあちこちに残っていますが、確実に空気は緩んできています。人事異動や卒業とは無縁の外来ですが、泣きべそだった子が立派な中学生になってきたり(新聞の死亡欄に患者さんの名前を見つけたりも)。春のこのワクワク感は、いつも胸にとどめておきたいものです。長く寒い冬があるからこそわかる有り難みですね。

忘却の彼方に

「はじめまして、よろしくおねがいします」入ってこられたのは、長年通っている90すぎの方
「こちらこそよろしくおねがいします(笑)どうですかお具合は?」
「ええ、カラダの方は大丈夫なんですけどボケの方がねえ」と娘さん
「まあいいじゃないですか、お元気そうで何より」
「ありがとうございます」
長年の恨み辛みもすべて忘却したようで、スッキリとすんだ瞳です

無抵抗主義の勝利

予防注射は初めてという1歳の男の子
「は~いちょっとチクッとするよ、ポチットナ~」
「・・・」
「えらいね、なかないね、すごいね」
「なんにもいたくなかった」
6才のお兄ちゃん、暴れてます
「いやだ~、ちゅうしゃいやだ~」
お母さんと看護婦3人で押さえつけます(まるでプロレス技!)
「動くとあぶないゾー、かえっていたいよ」ブチッ!
「ギャー、イテテテ(号泣)」
痛みよりも恐怖に問題があるわけで、こうしてトラウマは育っていく?

サプリでサッパリ

「あのう、ヒザが悪いっていったら、友達がこれを勧めてくれて」
「いまはやりのコラー○ンとかヒア○ロン酸というやつですな」
「飲んでも良いですか?」
「ダメとは言いませんけど高価ですよね」
「ええ」
「非常に吸収の悪い成分ですから、そのまま身につくわけではありません。『低下する、不足する、病気になる』とおどかされてサプリを入れすぎると、身体が自製する力を奪うので、補給されないとすぐに対応できなくなります」
もともと自給自足できるのに輸入に頼って(頼らされて)弱体化した国のようです

教育的処方?

「日曜日の夜、急に具合が悪くなって救急に行ったんですよ」
「大変でしたね」
「でも一日分しかお薬をくれなくて明日必ずかかりつけのところか普通の外来に来てくださいって」
「まあ、応急的な対応ですから仕方ないんですけどね」
(『時間外でかかるのはあくまで例外なんですよ、癖にしないで』という患者教育的な意味があるんだと先輩から聞かされました)
仕事休めない人もいるし、その辺は臨機応変にありたいですよね
自分の「懲罰的な動機」に気づいてからは、感冒くらいなら(せいぜい3日ですが)普通に処方するようになりました

トリアージ

「○○病院の外来はトリアージを導入しますって新聞に載っていましたけど、あれってどういうことですか?」
「救急外来や災害時に大事なことで、病状や重傷度に応じて優先順位を決めて治療すると言うことです」
「??」
「具合悪いけど自分の順番までガマンして待ってください、じゃなくて重症の人からはやく診ますよ、ということです」
「当たり前のような気がしますが」
「この重症度を評価するというのがけっこう難しいんですね」
「とりあえーず」決めるので「トリアージ」なんです、というのはジョーク

病気つくるのも簡単

「せんせい、きょうは胃カメラをしてもらいに来ました」
「あれっ、きのう一通り検査してって、でも胃カメラはいらないからって(笑)そういってましたよね」
「でも、のどが詰まる感じがするって言ったら、先生が胃も検査した方がいいんじゃないのって言って」
「うん」
「家に帰ってから、急に心配になってきて夜一睡もできなかったんです」
「・・・そうですか、じゃあすぐやりましょう」
その一言で病人をつくってしまう、医者は責任重大です(ひとことで病人を安心させることもできますが)

転載:月刊東洋療法 240号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ
昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部。田んぼに囲まれたふるさとで診察する熱き内科医。
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