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地域包括ケアの中の鍼灸マッサージ師


(公社)全日本鍼灸マッサージ師会 狩野 裕治

 鍼灸マッサージ師に未来はあるのか?そんな話題でよく仲間の先生と語りあいます。
 まずは、この業界の話の前に他の職種について考えていきたいと思います。
 しばしばニュースで10年後になくなるかもしれない職業について報道される事があります。米国のオックスフォード大学の研究によると10~20年後には約47%の仕事は自動化されるリスクが高いとの結論が出たとのことです。どのような職種かというと例えば銀行の融資担当者・スポーツの審判・レジ係・ネイリスト・ホテルの受付・彫刻師等様々な職種に広がっています。もちろんその中の全てが無くなってしまう訳ではないでしょうが、かなりの部分がコンピューターAIに代わってしまうことになるのかもしれません。
 もっとも昔はあったが今は見なくなってしまった職業というのもたくさんあります。
 例えば、エレベーターガール・交通巡視員・金魚風鈴氷売り・電話交換手・炭鉱夫等あげればキリがないほどたくさんあります。少子高齢化による人材不足やネットやAIの発達による効率化により産業転換が加速していくことは間違いないでしょう。
 では現在、鍼灸マッサージ業界ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
1、無資格者によるリラクゼーション(60分2980円やエステ、タイ式マッサージ等)
2、柔整師による実費治療の拡大
3、整形外科等医療機関によるリハビリ
4、高齢化や入会者減少による業界団体の弱体化
5、国民の健康保持に対する選択の多様化(医療機関・サプリ・スポーツ・レクリエーション・グルメ等)
6、社会保障費増大による抑制(鍼灸マッサージの医療保険の取り扱い厳密化・医師の不信感による同意書不発行・通所介護報酬の減額)
 その他にも多々あると思いますが、暗い話題が多いです。では、鍼灸マッサージ師は消えていなくなってしまうのでしょうか?私はそうは思いません。
 人間の欲求として、一般的に言われるのは3大欲(食欲・睡眠欲・性欲)です。
 これはマズローの人間の欲求レベルの一番先に欲する欲求です。人は命の危機の回避が一番強いと言われています。痛みや不安がストレスとなり、日々の生活の質を低下させてしまいます。なので、病院は人で溢れ、毎日多額の医療費が費やされています。
 鍼灸マッサージ師の知識と技術により、患者様の不快な愁訴を改善することが出来る施術者は今後益々需要が増えることは間違いありません。ただ料金の割に治療効果が足りない施術ではリピーターの患者獲得は難しく、評判が上がらないので施術者として生き残るのが厳しいのは言うまでもありません。最近は最新のマッサージ機やウォーターベッドや各種電気治療器、リラクゼーション等、患者様の選択肢は以前とは比べものにならないほど広がっています。我々施術者は、インターネットの情報やドクターショッピングを繰り返す患者様に負けず(勝負ではありませんが)、その患者様と信頼関係を構築するには最新の知識と技術と人間性が必須です。
 病院ではご存知の通り、内科・外科はもちろん整形外科・小児科・産婦人科・皮膚科・泌尿器科・眼科・耳鼻科・リハビリ科・精神科等たくさんの診療科目に細分化されています。
 それによるメリット・デメリットはあるかとは思いますが、それぞれの科により徹底的に原因を探求し、解明していきます。我々も問診・脈診等四診を通じ東洋医学的な診断はすると思いますが、現在の医療システムの中では病院との連携を強化し、共通の認識の中で病名や診断内容を共有することが適切と考えます。例えば転倒による膝の打撲の場合には、膝のどの組織にどれくらいの損傷があるのか?もちろん長年の経験により症状を把握出来る先生もいるかとは思いますが、レントゲンを撮り、各種検査をして必要であればエコーやMRI等の客観的な情報を医師とそのチーム(PTや看護師)と患者様で共有するのが普通のことでしょう。それにより今後の治療方針を立て、おおよその予後を出す。よって患者様はまだ痛みはあるけど安心を得られるとなるハズです。もしそのチームに鍼灸マッサージ師が入るとするならば、骨格・筋肉・神経系・循環系等について患者様や他職種の人と共通の言語で情報交換をしなければならないでしょう。その為の基礎となる知識(解剖や生理)が必須となる訳です。
 まさに、地域包括ケアのチームの一員となるには、他職種の人とどう連携をして、一人の患者様を支えていくのか?が重要となります。医者や看護師、PT等の医療職から介護福祉士や生活相談員、ケアマネ等の福祉系の人、本人・家族、様々な人のわかりやすい言語で治療方針やリハビリ内容を伝えていかなければなりません。
 その為に必要な知識や技術を特化して、獲得していかなければ真に必要とされる地域包括ケアの鍼灸マッサージ師になるのは難しくなってしまうことでしょう。
 いかにその分野での知識も持ち、患者様との関係を構築出来るか?が全てだといっても過言ではありません。当たり前の話ですが、喜ばれる人はどんどん人気が出ますが、失望させられる施術では次は無いとのことです。
 飲食店の新規開店の2年以内の閉店率は50%と言われています。
 5年以内だと70%、10年以上続く店は12%。実に10軒のうち1軒しか10年後まで残れないとの統計が出ています。
 我々が社会から必要とされ、地元の人々に愛されるようになるには、まさに真のプロフェッショナルとなり、その技を地域の皆様に還元していくということに尽きると感じています。
 日進月歩で医療は進歩しています。我々東洋医学に携わる者として、一生努力を惜しまず、様々な不定愁訴に対し、有効的な治療を提供できるよう、知識と技術の向上に努め、豊かな人間性を養いたいと思います。これからも患者様の期待に応えられる鍼灸マッサージ師を目指し、共に頑張りましょう。

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